Sweet Memories 2006

風がさーっと吹いて桜の花びらが舞うと、
風が優しく思い出を語りかけてくるようだ。
いつも不思議に思う。
なぜ春の風には、ほんのりとした甘い香りがするのだろう。
3年前もそうだった。
それは、自分の人生が激変していく時の流れの中、
何年たっても変わらない。

2016年6月のブログ記事

  • 第3章 第3節 父の死の真相 

     真っ黒いサングラスをかけた高木は、以前、大学の後輩である帝都新聞の記者、堀内と会ったホテルに来ていた。ロビーを見渡し、知り合いがいない事を確認すると、エレベータに乗って6階のボタンを押した。6階に到着すると、メモを背広の内ポケットから取り出し部屋番号を確認し、フロアの案内図に目をやりながら待ち合... 続きをみる

  • 第3章 第2節 ドタキャンから駒?

    夏至に近づき、すっかり日が長くなった6月、真央は恒例の二人女子会をするために、いつものイタリアンレストランで米倉の到着を待っていた。  給食センター内覧会があった日の帰り道、米倉に心の内をすべて打ち明けた真央は、その日以来、まるで新しい自分になった様な気がしていた。それは周囲の人間が気づくほど別人... 続きをみる

  • Sweet Memories 2006 あらすじ 全章目次

    お互いに天涯孤独な主人公の小沢翔と一条真央が、葛藤の中、次第に魅かれあい、心の成長を図りながら恋が発展して行く心情を、細かく描写した作品です。構想3年、全6章で、最初は純愛小説のような内容ですが、第3章から、市議会議員の翔が、市長の公共事業のスキャンダルの真相に巻き込まれながら対決して行くという、... 続きをみる

  • 第3章 公共事業の闇  第1節 元気の源

     給食センターの内覧会で、絵にかいたような偶然の出会いで真央と話ができてから、10日が過ぎていた。あれから翔は2度、朝の交通安全活動に行った。  一度目は、いつもの7時半に真央と会い、挨拶を交わした。その時は、おはようございますの後に「この前はありがとうございました!」と真央に言葉をかけることがで... 続きをみる

  • 第2章 第4節 真央の恋心

    一日の勤めを終えた米倉恵と一条真央は、夕日にあたりながら川辺の土手道を並んで歩いていた。 「今日は早く終わってよかったねー。」 「そうですね、恵先輩。教師って本当に雑用が多いですよね。」 「ほんと。でも今日は内覧会があったから、校長も教頭も直帰しちゃって。おかげで、職員室も『皆さんたまには早く帰り... 続きをみる

  • 第2章 第3節 市長登場

     市長の金城太市が乗った公用車は市役所へと向かっていた。車中の金城は上機嫌だった。 「給食センターもやっと完成にこぎつけたな。」 「そうですね、市長。今日の内覧会も大盛況で。これで市長の評判もうなぎ上りですね。」 隣に座っている副市長の中村のごますりで、金城は顔を崩して喜んだ。 「はっはっはっ。そ... 続きをみる

  • 第2章 第2節 翔の成果

    「ねえ、あの若い議員さん、わりとイケメンじゃない。」隣に座っている米倉恵が真央に小声で話しかけてきた。 真央は、給食センターのパンフレットに目を通していたが、その言葉で何気に米倉の視線を辿ると、市職員に案内され会場に入ってくる翔が目に入った。 あっと思ったが、「そうですかね。私は、あんまりタイプじ... 続きをみる

  • 第2章 出会いは偶然に 第1節 いざ、給食センターへ

    高木の代理で、市長肝いりの給食センター内覧会へ行くことになった翔だが、いつもの行政視察のように気持ちが乗らないということではなかった。それは、高木の、小学校の先生たちも参加するらしいという情報に、何となく胸騒ぎがしていたからだ。 「ひょっとしたら、あの先生が来てるかも。」 翔の、いつも自分に都合が... 続きをみる

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  • 第1章 第4節 ナイスなアドバイス

     朝の街頭活動を終えると、小沢翔は、その足で市役所の議員控室に向かった。議員になってこれと言った運動をすることはなかったが、元々スポーツマンだった翔は、移動にはほとんど自転車を使う。今日も、自転車にまたぎペダルをこぎ出す。桜はすっかり散ってしまったが、春の空気を切って進む翔の顔に心地よい風が吹き抜... 続きをみる

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  • 第1章 第3節 二人の女子会

    5月の連休が明けた日の夜、一条真央は職場の先輩教師の米倉恵に誘われて食事に行った。米倉は、40歳を過ぎてはいるが、元ミス日本だったほどの美貌の持ち主で、英語も堪能で小学校教師としては異色の存在だ。それだけでなく、破天荒な性格も相俟って、校長や教頭からは特に目を付けられていたが、竹を割った性格で面倒... 続きをみる

  • 第1章 第2節 私は一条真央

     私は、一条真央。小学校の教師だ。学生時代はアナウンサー志望だったが、テレビ局はどこも受からず、悩んだ末、母が教師であったこともあって、この町の教員試験を受けた。熱望した職ではなかったが、採用の通知を頂いたので、気持ちを一新し教職に人生を捧げることにした。 教師生活は8年目になるが、この4月に今の... 続きをみる

  • 第1章 坊ちゃん先生の恋 第1節 私は小沢翔

    風がさーっと吹いて桜の花びらが舞うと、風が優しく思い出を語りかけてくるようだ。いつも不思議に思う。なぜ春の風には、ほんのりとした甘い香りがするのだろう。 3年前もそうだった。それは、自分の人生が激変していく時の流れの中、何年たっても変わらない。 3年前  私は、小沢翔。関東近郊の中核都市に住む市議... 続きをみる